四段受験課題

 初心者の指導法

諏訪道場 塩脇 泰生


 私が初心者を指導するとき、気をつけているのは以下の三点です。

 1.怪我をしない・させないようにすること
 2.稽古を楽しんでもらうこと
 3.技の厳しさを知ってもらうこと

 まず1の怪我をしない・させないについてです。最初のうちは慣れない動きや緊張で、身体が硬直しがちです。
慣れてきたら慣れてきたで、今度は油断や無茶な動きをやり始めてしまうこともあります。怪我をした方はもちろん、させてしまった方も嫌な気持ちを味わうものです。
身体の硬さが取れるうちは、できる限り付きっきりで視るようにしています。ある程度慣れてきてからも、危険な動きをしていないか、よく注意することを心掛けています。


 次に2の稽古を楽しんでもらうですが、稽古中、技が掛からないとやはり楽しくなくなっていくものです。そういうときには受けに対して「正しい受けをするように」と伝えることにしています。
正しく受けを取れば、取りの動きも自然と正しいものになっていきます。技の形を最後までやり切ることは、稽古後の充実感にも繋がっていくのではないかと考えています。


 そして3の技の厳しさについてです。合気道は「一撃克く死命を制する」ものです。その意味で技は真剣と同じです。
ですからたとえば、暴漢に襲われたら合気道の技を使えばいいという考えは、暴漢に襲われたら刀を抜いて斬ってしまえばいいと考えるのと同じことだと思います。
私たちは常に真剣を向き合わせて稽古しているという心構えを、技と言葉の両面で伝えていきたいと思っています。


 最後になりますが、以上述べてきたことは諏訪先生はじめお世話になってきた先生方、先輩方、それに共に汗を流した道場生の方々との関わりによって生まれたものです。
未だ至らぬことばかりの若輩者ではありますが、それが私の人間形成にいい影響を与えてくれているならば、こんなに有り難いことはありません。
そう考えると、初心者の指導法で最も大事なことは「感謝の気持ちをもって指導する」ということなのだろうと思います。

 ありがとうございました。